そもそも、喧嘩しちゃダメなのか?

FREE CAMPのプログラムの中では、子どもたち同士のトラブルがよく起こります。言い合いになったり、追いかけ合いになったり、時には取っ組み合いになることもあります。
ただ、私たちはこれを「困りごと」だとは思っていません。今回は、そのときにどう関わっているか、どうなってほしいと思っているかをお話しします。

①自由に遊べば、ぶつかることもある
私たちは、「これをしないでね」「それはダメだよ」というルールをできるだけ作らず、子どもたちが「やってみたい」と思ったことをやってもらうようにしています。
そうすると、自己主張の強い子同士がぶつかることは、自然と増えます。たとえば低学年〜中学年のプログラムでは、拾った木の枝が「誰のものか」といった、大人からすると些細に思えることで言い合いになることがあります。高学年になると、「この遊びがしたい」「自分ばかり意見を聞いてもらえない」「自分の話も聞いてほしい」といった、少し複雑な不満が出てくることもあります。中には、それを口に出せずに我慢している子もいます。
② 怒りは、勇気を出した「自己開示」
子どもが怒っているとき、私たちがまず思うのは、それを止めようということではありません。
怒りは、自分の気持ちを外に出している行動のひとつです。特に、ずっと我慢していた子が、ようやく「もう我慢できない」と声をあげた瞬間だったりもします。それは、その子にとって決して簡単なことではありません。ぶつかることを承知の上で、自分の中にあったものを、勇気を出して外に出した瞬間です。
だからこそ、そのメッセージをきちんと聞きたいですし、できれば相手にも伝わってほしいと思っています。「怒っていること」自体を止めようとは、あまり考えていません。
③手が出た瞬間、気持ちは伝わらなくなる
止めた方がいいのは、殴るなど手が出てしまう場面です。
本人が本当に伝えたいのは「殴りたい」という気持ちではなく、悲しかったり悔しかったりする気持ちのはずです。手が出てしまうと、その本当の気持ちが伝わらなくなってしまいます。もちろんケガにつながりそうなときはすぐに止めますが、そうなる前に「本当はどうしたかったの?」「悔しかったんだよね」というふうに、気持ちを言葉にするサポートに入るようにしています。

④ 本当に知りたいのは「どうしたかったのか」
トラブルが起きたとき、まずその子が何を思っていたのか、何を伝えたかったのかを聞くようにしています。相手がいる場合は、相手に対して何を求めているのかも聞きます。謝ってほしいのか、ただ伝えたかっただけなのか、あるいは何か別のことをしてほしいのか。
ここには、私たちが大事にしている前提があります。喧嘩をしている子どもたちは、相手を打ち負かしたいとか、相手の人格を否定してやりたいとか、そんなことを思っているわけではない、ということです。ほとんどの場合、その奥にあるのは「分かってほしかった」「大切にされたかった」というシンプルな気持ちです。
そこがうまく伝わらないまま「どっちが悪いのか」という話になってしまうと、本当に伝えたかったことが伝わらないまま終わってしまいます。それはとてももったいないことだと思っています。
⑤ 誰が悪いかを、私たちが決めることはしない
私たちは、どちらが良い・悪いという判断はしないようにしています。「よくわからないから教えて」という立場で、どちらの味方でもなく、ただ話を聞かせてほしい、というスタンスを大事にしています。
子どもたちは、大人が来ると「怒られる」「自分が悪いと思われる」という経験をたくさんしてきています。ですので、「ジャッジしにきたわけじゃないよ」「何か伝えたいことがあるはずだから、それが伝わるお手伝いがしたいだけだよ」ということを、態度で示すようにしています。
正直なところ、どちらが正しいかは私たちにもわからないことが多いです。それでも、伝えたかった気持ちや嫌だった気持ちが伝わったら、その子はきっと嬉しいはずです。私たちは、その手伝いをしたいだけなのです。最悪、相手にうまく伝わらなかったとしても、「その気持ち、分かったよ」と伝えられるだけで十分だと思っています。誰か一人でも、自分の気持ちを受け止めてくれた、と感じてもらえたらと考えています。
⑤ 「聞いてもらえた」─それだけで、満足する
実際のところ、子どもたちは「話をちゃんと聞いてもらえた」というだけで、多くの場合は満足します。私たちが「ちゃんと受け止められたな」と感じられたとき、その子も同じように感じていることが多いようです。意外と、そのあとまで気持ちを引きずることは少ないものです。
以前、あるキャンプでこんなことがありました。些細なきっかけの言い合いを止めたあと、お互いに言いたいことを聞き合い、謝ったわけではないけれど「お互い言いたいことを言えたから、もういいか」という空気になって、その場は解散しました。すると10分後には、その2人は一緒に鬼ごっこをして走り回っていました。これは、気持ちを切り替えるためのお手伝いができた瞬間だったのだと思います。
もちろん、パターンはさまざまです。カッとなって出た言葉は比較的早く収まることが多いですが、悲しかった・嫌だったという気持ちは、そう簡単には切り替わらないこともあります。

まとめ
子どもたちの喧嘩やトラブルに対して、私たちが大事にしているのは、良い・悪いをジャッジすることではありません。その子が本当に伝えたかった気持ちに気づき、それが伝わるよう手伝いをすることです。
怒りや悔しさ、悲しさといった溢れる気持ちは、その子が何かを大切に思っていた証拠でもあります。誰も、相手を傷つけたくて怒っているわけではありません。私たちは、その奥にあるあたたかい部分を、ちゃんと感じ取れる存在でありたいと思っています。
自分の気持ちを無視せずに持てること、そしてそれが誰かに伝わる経験ができること。それが、子どもたち自身にとっても、周りにとっても、より良い状態をつくることにつながると考えています。
FREE CAMP代表:野田 れお

