「息子を夏休みのキャンプに入れる」と言ったら、同僚ママは苦笑いした。しかしキャンプから帰ってくると…

私は38歳、フルタイムで働きながら小学3年生の息子を育てている。
息子はおとなしい子だった。
友達とケンカするわけでも、問題を起こすわけでもない。
でも、何かを自分から決めることが、とにかく苦手だった。
「今日の夕ご飯、何食べたい?」「わからない」
「どの習い事がいい?」「お母さんが決めて」
「夏休みは何したい?」「別に何でも」
返ってくるのはいつもそんな答えで、私はそのたびにため息をついた。
このまま大人になってしまったら、どうなるんだろう。
自分で考えて動けない人間になってしまうんじゃないか。
そんな不安が、頭の隅にいつもあった。
7月のある日、職場のランチで同僚のママたちと夏休みの話になった。
「うちはサマー講習、もう申し込んだよ。4年生からが勝負って先生に言われて」とAさん。
「うちも。うちの子3年生だけど、早めに始めておかないとって思って」とBさん。
「私、息子をキャンプのプログラムに入れようと思って」と言うと、一瞬、場の空気が変わった。
「えっ、キャンプ?夏休みに?」
「楽しそうだけど…それって何か身につくの?」
「まあ、のびのびさせたいならいいんじゃない」
笑われたわけじゃない。でも「本気で子どもの将来を考えているお母さん」として見てもらえていないのは、はっきりわかった。
その夜、少し迷った。やっぱり塾にした方がいいのかな。みんながそうしてるなら、そっちが正解なのかな。
でも、息子の「わからない」「何でも」という顔を思い出して、申し込みボタンを押した。
キャンプから帰ってきた息子は、別人だった。
出発の朝、息子は緊張した顔でリュックを背負っていた。
「友達いなかったらどうしよう」と小声でつぶやいた。
「大丈夫、なんとかなるよ」と送り出しながら、私も少しだけ不安だった。
数日後、迎えに行くと、息子は日焼けした顔で走ってきた。
そして開口一番、こう言った。
「お母さん、俺、火おこせるようになった。あとめちゃくちゃ楽しかった」
キャンプの中で、何が起きていたのか。
後から息子に聞いて、少しずつわかってきた。
FREE CAMPのサマーキャンプでは、生活そのものが遊びになる。
起きる、食べる、寝る。その一つひとつを、子どもたちが自分たちで動かしていく。
誰かが「次はこれをやりなさい」と指示するわけじゃない。
スケジュールは大まかにあっても、その中身は子どもたちが決める。
夜の寝場所も、自分たちで整える。
テントの張り方は教えてもらえる。でも「どこに張るか」「誰がどこで寝るか」は自分たちで決める。
「木の根っこの上に寝たら痛い」「ここ、朝日が当たって暑そう」
そんなことを真剣に話し合いながら、最高の寝床を探す。
遊びも同じだ。
「川に行こう」「いや、あっちの山のほうが面白そう」「じゃあまず偵察してから決めない?」
子どもたちが自分たちで作戦を立て、動いて、うまくいかなかったら話し合って、また動く。
息子が話してくれた一番印象的なエピソードがある。
2日目、みんなで川遊びの計画を立てたとき、意見がまとまらなくてもめたらしい。
「上流に行きたい派」と「その場で遊びたい派」に分かれて、しばらくぐるぐると話し合いが続いた。
「最終的に、じゃあ両方やってみようってなって、全部楽しかった」と息子は言った。
正解がない場所で、自分たちで答えを出す。その経験が、数時間で子どもを変えていた。
もちろん、スタッフはずっとそばにいる。
危険なことには手を差し伸べる。体調の変化も見逃さない。
でも、子どもたちが自分でやれることには、口を出さない。
その絶妙な距離感が、子どもを本気にさせるのだと思う。
帰ってきてから、息子が変わった。
キャンプから戻った夜、息子は夕食を食べながら1時間近くしゃべり続けた。
「あのときさ、みんなで話し合って…」「最初は意見がぶつかって…」「でも最終的に…」
こんなに自分から話してくれたことが、今までにあっただろうか。
そしてその数週間後、担任の先生から電話があった。
「最近、クラスでの様子が変わったんです。グループ活動のとき、○○くんが『じゃあ俺が仕切っていい?』って手を挙げてくれて。みんなをうまくまとめてくれたんですよ」
思わず、「え、うちの子が?」と聞き返してしまった。
「はい。なんか、夏休みに何かあったんですか?って思うくらい、自信がついた感じがして。ああいうお子さんって、クラスにとってもすごく大事なんですよね」
電話を切ったあと、しばらくぼんやりしてしまった。
「どうする?」と聞かれたとき、「わからない」じゃなく、自分なりの答えを出そうとしている。
それだけで、十分だと思った。
9月のランチで、夏休みの話になった。
AさんもBさんも、サマー講習の話をしていた。
「うちの子、頑張ったけど疲れてて…」「夏休み、あんまり楽しめなかったみたいで」
私が息子のキャンプと、先生からの電話の話をすると、二人はしばらく黙っていた。
「そんなに変わるもの?たった数日で?」
「うん。でも、あの子があんな顔して帰ってきたのは、初めてだったから」
自信に満ちた、日焼けした顔を、私はまだ覚えている。
もし、あのとき申し込んでいなかったら。
今でも時々思う。
あのランチの日、「やっぱり塾にしよう」と決めていたら、どうなっていただろうと。
息子はきっと、今でも「わからない」「何でも」と言い続けていたと思う。
私がFREE CAMPのサマーキャンプを選んだのは、たった一つの理由だった。
息子に、自分で何かを決める経験をさせたかった。
テストの点じゃなくて、偏差値じゃなくて、ただそれだけだった。
結果として、それは正解だったと思っている。
いや、「正解」という言葉もおかしいかもしれない。
息子自身が、自分で答えを出せるようになったのだから。
この夏、同じ経験をお子さんに。